日本映画化の巨匠、故・黒沢明監督が手がけたとされる作品の脚本3本が、新たに確認された。
これまで明らかにされていなかった、書き下ろしのラジオドラマ台本や、出演俳優が決まりながら製作中止となってしまった作品の準備稿など、黒沢作品製作の裏側を知る貴重な資料だ。
今回確認された3本のひとつ、「陽気な工場」は、1942年8月15日に放送されたNHKのラジオドラマの台本。早稲田大学坪内博士記念演劇博物館に所蔵されていたが、黒沢研究で言及されたことがなく、存在すらほとんど知られていなかった。戦時下に入った工場の吹奏楽団をユーモラスに描く戦意高揚の物語で、楽団の描写は、映画「一番美しく」(1944年)の女子工員の鼓笛隊に通じるものがある。