自殺者が12年連続して3万人を超える中、自殺者の遺族に高額な損害賠償を請求するケースが、増えている。
警視庁が今年の5月に発表した、平成21年中における自殺の概要資料によると、平成21年の自殺者の総数は3万2845人で、平成20年よりも596人増加した。また今年10月までの自殺者数は、2万6304人となっており、このまま推移すれば、昨年と同程度になると予想される。
このように、自殺者の数が高止まりする中、賃貸アパートやマンションで自殺した人の遺族が、部屋の改装料や家賃補償など、多額の損害賠償を求められるケースが相次いで報告されている。
自殺から発見までに長期間を要した場合、室内にその痕跡が残ってしまう。そのため、部屋全体の高額なリフォーム費用を請求されることもあるという。また自殺があった部屋は、借り手が見つかりにくいことから、3年~5年分の家賃をまとめて請求され、裁判で争うケースもあるようだ。
自殺があった賃貸住宅は、「心理的瑕疵物件」と呼ばれ、次の入居者が決まらなかったり、家賃が大幅に下がったりすることがある。賃貸住宅の家主は、建築時に借入金を抱えていることもあり、遺族に相応の損害賠償を請求するのはやむを得ないという見方もある。
これについて、管理会社などの業界団体である日本賃貸住宅管理協会は、家賃の1~2割を2年分程度請求することを目安としているようだ。しかし、法的な根拠がなく、判例も少ないことから、時として過大な請求も行われているとみられる。
このような背景を反映して、エース損害保険株式会社では今年から、万一自殺や孤独死が発生した場合に、管理業者が家主に支払う見舞金費用を補償する、保険の販売を開始している。12年続けて自殺者が3万人を越える中、その損害を遺族に負わせるのは、限界があるのかもしれない。