民主党内最大グループを率いる小沢一郎元代表が、代表選出馬を表明した前原誠司前外相を支持しない意向を固めたのは、「挙党態勢」の具体像に関する溝が埋まらないためだ。
元代表側は、党幹事長や官房長官ポストなどに関して小沢グループの融和が見込める処遇を求めているが、前原氏は受け入れない姿勢で、ともに必要性を強調する「挙党態勢」を巡って「同床異夢」の状況となっている。
前原氏は25日夜のテレビ朝日の番組で、「(民主党の)皆さんの知恵を借りたい。小沢元代表をはじめ、長いキャリアを持った方々に対しても挙党一致、全員野球をお願いしたい」と述べた。これに先立ち、新代表に就任した場合の幹事長人事について、「頭の中にはある」と記者団に語った。
前原氏は23日の出馬表明以降、「全員野球」「挙党一致」という言葉を意識して使っている。24日の元代表との会談でも、「挙党一致で国難に立ち向かっていきたい」と協力を求めた。
しかし、小沢元代表側は反発している。元代表に近い鳩山前首相は25日の自らのグループの会合で、「『挙党一致』というあいまいな言動で、あたかも党内が一つにまとまると装う方がいる。我々が望んでいるのは『挙党一致』を超えた『挙党態勢』だ。そこを皆さん方には見分けていただきたい」と語った。
元代表側がこうした姿勢を示すのは、前原氏らの言う「挙党一致」は、「みんなで『前原政権』を支えてほしい、ということだ」と受け止めているからだ。
元代表側は、元代表に近い人物を幹事長などで処遇することで「挙党態勢」を築くよう主張している。
党員資格停止となった元代表の求心力には陰りも見え、10月には自らの資金管理団体の政治資金規正法違反事件の裁判も始まる。元代表側には、処分の撤回と、党の資金と選挙での公認権を握る幹事長の確保で、元代表の「復権」につなげたいという思いが強い。
しかし、元代表の「政治とカネ」の問題を批判してきた前原氏は、処分見直しに否定的だ。24日の鳩山氏との会談でも、「鳩山氏も首相時代、小沢幹事長の処遇には困ったと思う」と元代表の手法を批判した。この発言を伝え聞いた元代表の周辺は「前原氏は絶対に信用できない」と反発しており、亀裂は深まるばかりだ。 読売新聞