ソウル高裁は16日、韓国の公安当局が1975年に在日韓国人を北朝鮮のスパイ団として一斉摘発した事件で約4年間服役した在日2世、金東輝さん(57)の再審で無罪を言い渡した。自白調書は拷問などによってでっち上げられたもので、有罪と証明できるものがないとした。
事件は韓国中央情報部(KCIA、国家情報院の前身)が75年11月22日、大学に入り込んだ在日韓国人学生ら数十人のスパイ団を摘発したと発表したことから「11・22事件」と呼ばれる。
医師になろうと韓国留学中だった金さんは、懲役4年の判決を受け、1979年まで服役した。金さんは、昨年5月に国家機関の真実解明や被害者との和解を目指す韓国政府の委員会から「調査過程で不当に拘束され、過酷な行為を受けた」と認められたため、再審を請求した。
金さんは、この日の判決後、事件について「服役で人生が大きく変わってしまった」と感想を述べた。無罪判決が出たことについては、「民主主義のために犠牲になったり、尽力してきた方たちのおかげ」と話した。