警察署の取調室で全面禁煙化が急速に進み、来春までに全都道府県で完全達成される見通しになった。警察庁によると、公共施設では全面禁煙が進んでいるが、容疑者と向き合う取調室は遅れていた。禁煙は、狭い部屋での受動喫煙を防ぐだけでなく、容疑者への便宜供与を防ぐ狙いもあり、テレビドラマなどでおなじみの「1本吸わせて」という光景は過去のものになろうとしている。
警察庁は昨年7月、取調室の禁煙化を検討するよう全国の警察に要請。10月現在、38府県警と警視庁、皇宮警察が禁煙を実現した。残る北海道、千葉、栃木、和歌山、福岡、熊本、長崎、宮崎の計8道県警でも来春までに禁煙にする。禁煙は、03年に健康増進法が施行されたのを受けて公共スペースで進んでいた。しかし、捜査関係者によると容疑者の喫煙率が高く、取調室は遅れていた。
「県警対組織暴力」(75年、東映)など主に任侠(にんきょう)映画のモデルとされ、取調室の場面が登場した広島県警は、8月1日から禁煙に。拘置中の容疑者には、朝の運動時間に自分で買ったたばこを指定場所で吸わせるようにした。
導入前は、ベテラン捜査員らから「たばこは容疑者とのコミュニケーションツール」「現場を知らない人の考え」と禁煙に抵抗する声が聞かれた。しかし3カ月が経過して大きな不満はなくなり、むしろ、たばこの大幅値上げなどを受けて禁煙に踏み切る捜査員もおり、禁煙効果は取調室以外にも波及しているという。